■ツバキの様子
ツバキはよく知られた植物ですが、その様子をおよそ思い起こしてみましょう。【樹】
樹はあまり大きくはなく、希に5mくらいの大木を見かけることがあります。種類が多少違うのかもしれませんが、森林の中のやや暗い所だけでなく、日当りのよい明るい場所でやや大きく成長していることもあります。常緑で樹全体は、空間に広がり出て行くという感じではなく、こんもりとした印象です。樹の肌は灰色で、わずかにザラザラしてはいますが、でこぼこではなく、しわも割れ目もありません。
【葉】
葉は、肉厚で硬く、瑞々しさは感じません。また、大きさは名刺サイズくらいでたの樹に比べて小さい方と言えるでしょう。色は表(光軸側)が濃い緑で、その色味の濁りから赤を多く含んでいることがわかります。裏(背軸側)は明るい緑色をしています。ゲーテの言うアナストモーゼ(再結合)が葉脈に観察されますし、再結合の位置が縁からかなり内に入った部分であることも目に付きます。
【花】
本来の花の色は赤のようで、多数のおしべが花糸の部分で融合し、筒状になっています。先端は分かれていて、山吹色に近い花粉が多数見られます。【果実と種子】
7月上旬の果実
10月下旬くらいから、ツバキの実が成熟してきます。緑色の果実の中に、焦げ茶色の種子が入っていますが、この種子の中身がツバキ油の原料になります。樹で成熟した状態で収穫しますと、特に乾燥させなくても、火を付けることができ、わずかな黒煙を上げて、ロウソクの炎のように非常によく燃えます。この燃焼実験は子どもたちにも見せています。
こうした様々な特徴を《拡張・収縮》の視点で思い浮かべますと、ツバキが外に向けて広がるのではなく、内に入り込み、ため込む傾向を感じ取るはずです。たとえば、本来、拡散の傾向が強いはずのおしべで、それらが互いに融合しているのは典型的です。
【ツバキのしぐさ】
この外に広がらないツバキが内でしていることを考えますと、それは《熱の凝縮》であるように思われます。1月に開花して、10月下旬に結実することを考えますと、ツバキは夏至を含む9ヶ月の太陽の力を実に集めています。4月に開花し、6月には出荷されるサクランボなどと比べてみてください。非常に長い日数をかけてツバキの実が成熟することがわかると思います。■熱を集めるツバキ
植物画では、カーマインの下塗りが基本ですが、ツバキを描くときには、熱の要素、そして生命の温かさを、やや濃い目のカーマインで表現します。そこに光と風の要素を加えますが、花を描く部分は描き残しておきます。
ツバキの葉はシンプルな形をしていますから、黄色と青を繰り返し重ねて概形をつくり、最後に先端を少し尖らせるだけで、それらしい表現になります。花はカーマインをらせん状に乗せていきます。最後におしべの黄色をリング状に描き入れます。
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