■エジプトの芸術
まず、メンカウラー王の彫像を詳しく見てみよう。深彫りのレリーフのようで、板状の背景から三者が並んで前方に歩み出ている。背景から最も前方に出ているのは、メンカウラー王の左足であるが、その左足も背景の板とつながっている。右側の人物は両手に、王は左手に短い棒状の物を握っていて、非常な緊張感が漂っている。また、王は右手で女神と手をつないでいる。
背景と最も繋がりを感じさせるのは、三人すべて頭部の上にある部分である。左の女神イシスでは角と太陽円盤、メンカウラーでは冠、右側の人物では頭部から伸びた飾りのようなものである。
この彫像には、板状の背景から前方に歩み出る際の非常な緊張感が見られる。
この背景を仮定的に霊的世界と考えてみよう。すると、メンカウラー王はイシスに付き添われ、この物質界に緊張を持って歩み出ていると見ることができる。
■ケフレ王の座像
ケフレ王の座像も興味深い。座ってはいるものの、身体全体に緊張感がみなぎっている。右手には短い棒状の物を握り、左手は膝の上にぴったりと置かれている。背筋はしっかりと伸び、堂々とした体躯もリラックスはしていない。頭部は前方に向けられ、身体に比べて解放された印象を受ける。
ところが、このケフレ王の座像を横から見ると、まったく違った事情が見えてくる。
正面からは見えない形であるにせよ、タカが両翼でケフレ王の頭部を抑えているのである。タカはホルス神と考えられる。つまり、王という存在の背後には、霊的存在であるホルス神がいて、常に王にささやきかけている。
エジプト期の人類は、まだまだ霊界とのつながりが強く、懸命に地上界に出てこようとしている、と言えるだろう。
■エジプト文化期との関係
シュタイナーの観察によれば、エジプト文化期(第三後アトランティス文化期)は紀元前3000年くらいから、紀元前800年くらいまでである。ここで紹介した像は、その後期のものである。しかし、エジプト芸術には「過去の踏襲」という特徴があり、かなりの年月を経ても、芸術表現はあまり変化していない。その意味で、上の彫像はエジプト文化期の基本的雰囲気を示していると考えても、問題はないだろう。
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