■色彩から描く金魚
「アントロポゾフィー的絵画が目指すもの」の項を読んでいただくとわかりますが、シュタイナー的絵画の一番の課題は色彩から描くことです。その一部を取り入れて4年生の動物モチーフを描いてみました。つまり、金魚を色彩的に「浮かす」試みです。導入的練習として、コピー用紙に金魚の概形を描く練習をします。具象画ではどうしてもこうした練習が必要になりますが、4年生になりますと本人が絵の出来栄えを気にし始めますから、練習によって(日常的な意味でも)上手に描けると本人も喜びます。
補色同士のはじき合いをダイナミクスとして利用します。つまり、金魚は赤ですから、補色である緑を使うことでそれ「浮かせる」のです。その際には、色を塗る面積の大きさ、色の濃さ、色調などによってその支える力が変化するのを体験できます。
絵画のプロセスとしては、まず、中央に赤を丸く置きます。次に、上下からレモンイエローを描いていきますが、この時点では中央の赤が十分に支えられていません。ところが、下側にプラシアン・ブルーを入れますとそこが緑に変わり、その力で赤い丸が次第に浮力を獲得していきます。十分に浮いている感じを体験したら、事前に練習したように尾びれ、背びれを描いて金魚の形にもっていきます。その際、赤の面積が大きくなりますから、最後にもう一度下部の緑を調整して、再び十分な浮力が得られるようにします。
色彩は画像の関係で青みがかったようです。オリジナルでは絵の上部はもっと黄色い感じです。
■実はパクリ
「色彩によって浮かす」というアイディアは画家のアンリ・マチスから借用いたしました。彼の「金魚」という作品では、浮遊感が上手く演出されています。テーブル面とテーブルの脚の関係や上に乗っている水槽の様子などから、この絵を物質的に想像すると水槽が下に落ちていく動きを持っています。その動きに対抗して金魚(特にその中の一匹)は浮き上がる雰囲気を持っています。そして、その浮き上がる力は色彩の配置によって得られます。
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