2014年8月28日木曜日

ルネサンス・・・自らの内に中心を感じる

■ブレネレッキによる透視遠近法の発明

ヨーロッパにおいて、自我の目覚めはルネッサンスにおいてやって来ます。その中でも特筆すべき出来事は「透視遠近法」の発明です。透視遠近法によって、人類は外的物質空間を描き始めます。それ以前の絵画では、「対象に対する内的な近さ」によって描き分けられていました。つまり、重要な人物は遠方に居ようと、大きく描かれるのです。その意味では「内的意識空間」が絵画に反映されていました。ところが、透視遠近法により、物質空間が絵画に取り込まれたのです。



透視遠近法においては、

  • 自分から遠ざかる平行線が、画面上の消失点交わり、
  • その消失点は、画面に向かった私の視線の延長線上にある、

という現象が起こります。言い換えますと、透視遠近法では、空間内の無限遠点を意識するのと同時に、私の立ち位置も意識せざるを得ないのです。
このように、ルネッサンス期には、人間が物質的外界と出会うことで人間も自分自身の地上存在を意識し始めるようになります。その代表的な作品が、ファン・アイクの『アルノルフィーニ夫妻像』とデューラーの諸作品、特に『自画像』です。

▲ファン・アイクの『アルノルフィーニ夫妻像』

細部まで「見えるままに」描ききろうとする努力は明らかです。

凸面鏡の中には、描いている自分も描き込まれています。
諸説はありますが、絵のほぼ中央に自らの名前を署名しています。個としての自分をしっかりと意識していたことが伺われます。

▲デューラーの『自画像』

デューラーも名人芸的描写力で物質界を描きました。そしてまた、自画像という画題が、自己意識の強い現れであることも確かです。

■それ以前の兆候

13世紀のジョットでは、絵画の中に情景の意味が深く盛り込まれています。それが当時の意識と合致していたのです。


スティグマを受けるフランチェスコ

14世紀に活躍したシモーネ・マルティーニの『受胎告知』では、背景は完全に金屏風になっています。その意味では、ガブリエルによる受胎告知を物質界からは離れて描いたように見えます。



しかし、全体をよく観ますと、この画家が床の大理石を丁寧に描いていることがわかります。



画家としての情熱を注いでいる、と言ってもよいかもしれません。このように、「物質に対する目覚め」は着実にやって来ていて、それがルネッサンスで花開いたのです。

■ブレネレッキによるフィレンツェのドゥオモ



フィレンツェの大聖堂を完成させたのも、最初に紹介したブレネレッキです。その空間体験は、それ以前のゴシック様式とはまったく違います。

ゴシックの天井

ゴシックでは、《内部》は強く感じますが、《中心》はありません。ところが、ドームではその構造からも明らかですが、《中心》を強く感じるのです。そして、ルネサンスの人びとは、それをよしとしたのです。

デゥオモの内部

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