2014年8月8日金曜日

鳥(ワシ)は感覚系の動物

■鳥について共通に言えること

頭部、胴部、四肢の比率を考えてみましょう。
一番目立つのは胴部ですが、その中でも上部に当たる胸郭部と、それに繋がる人間の腕に当たる部分、つまり翼が一番目立ちます。

その中心ブロックから(静止状態では)上に頭部、下に脚部があります。カラス、スズメといった脚や頸の比較的短い種類から、サギ、ツルなどの脚や頸の長い種類まで居ます。大雑把に見れば、「頸の長い鳥は脚も長い」という傾向がありそうです。もちろん例外もあり、白鳥などの水鳥は頸が長くても脚は短い傾向があります。
Starck『比較解剖学』より

■鳥の感覚

鳥の感覚器官を比較してみますと、他の感覚に比べ視力が圧倒的に優れています。味覚や嗅覚はあまり発達していません。フクロウでは聴覚も非常に優れています。
猛禽類の眼を観察してみましょう。
Starck、比較解剖学より

まず大きさはかなり大きく、頭蓋骨の中で占める割合は脳より大きいようです。
眼の性能を考えると、非常に高性能で,解像度は6倍の双眼鏡に匹敵するそうです。しかも、私たちが双眼鏡をのぞくと、視野が非常に狭くなってしまいますが、鳥の場合は高解像度でしかも広範囲が見えています。
また、動体視力的要素も非常に優れています。映画のフィルムは、少しずつ変化する静止画を1秒間に24コマの速さで取り替えていくと、人間は「バラバラな絵」としてではなく「連続した動き」と見なします。静止画を送る速度を遅くして、たとえば1秒に1コマの割合にしたら、それはもはや「動く絵」ではなく、やや早いスライドショーでしかなくなります。ところが、その点での視力が優れた鳥では、150コマ/秒がスライドショーに見えるのだそうです。

▲二つの黄点

眼の網膜上には、視細胞が特に密集した部分があります。そこに結ばれる像は、人間の視野では中央部分に感じられます。視界としてよく見える部分と、網膜上での視細胞が密な部分が対応しているのです。私たちはその部分を使って、字を読むなどの集中した作業を行っています。鳥では、網膜上に黄点が二つあります。その二つの黄点を使って、前方を注視しつつ、横にある物体もしっかりと見ているはずです。

▲眼の解剖学的特徴


  • 動眼筋は未発達で、代わりに頸がよく動く
  • 形は全体に偏平である
  • 神経結合(シナプス)がすでに網膜上にあり、そのため網膜が厚くなっている
この三つの現象が何を語るかを考えてみましょう。まず、動眼筋の問題を取り上げます。
友人が居て、その人の斜め前方から話しかけたとしましょう。その時の相手の反応として3つの可能性を挙げます。

  1. 身体全体で自分の方を向いてくれる
  2. 顔を自分に向けてくれる
  3. 姿勢は変わらず、視線だけ自分に向けてくれる

この3つの反応で、相手の自分に対する結びつきの違いが感じ取れるでしょう。つまり、3では自分自身の位置を保っており、相手の気持ちは完全には自分に向いていません。それに対し、2や1では相手の気持ちが私に向いていて、ずっと一体感があります。
これをヒントに考えますと、鳥では3の態度を取ることができず、最低限2の状態で、対象と直接に結びついていきます。
これを鍵にしますと、扁平な眼球というのも理解できます。奥行きが深くなればなるほど、対象と自分を切り離しつつ、いわば認識的に知覚する方向になります。しかし、鳥の場合には、見ている世界とより直接的に結びついている、と言えるでしょう。そして、眼の奥にあるべき視神経が眼球内までせり出してもいるわけです。
こうしたことから、「鳥は視覚世界と密接に結びつている」と言えるでしょう。

また、鳥類の発生では、まず眼が発達してくることも特徴的です。

■羽

羽を持つことは鳥の大きな特徴です。これは非常に軽く、羽毛3500本で2g程度しかないのだそうです。羽の主軸は空洞になっていて、中には空気が入っていますが、羽から枝分かれした細い部分も空洞になっているそうです。こうした空気の力もあって、羽にはすぐれた保温性があります。
また、羽はかなり死んだ器官です。羽が成長してくる際には、当然生きています。しかし、一旦成長してしまいますと、傷がついても再生能力はなく、一枚の羽全部が生え替わる必要があります。だからこそ、羽の一部を切って飛翔能力を弱め、ペットとして飼うことも可能で、次の羽の生え替わり期までは、飛んでいなくなってしまうことはないのです。

▲羽は空気の知覚器官でもある

鳥の羽を持ってみますとよくわかりますが、羽が受ける抵抗で、空気の動きをよく感じ取ることができます。
風の強い日には、カラスは風と遊びます。特に必要もないと思われるアクロバット飛行を行うのです。これは風を感じとっていなくてはできません。そして、その際には翼の先の羽で風を触るような仕草をします。

▲ツルはなぜ一本脚で眠るか

スズメなど多くの鳥がバランスを取って電線にとまっています。ただし、このバランスという意味が人間の場合と大きく違っています。人間にとってのバランスとは《対重さ》でのバランスです。しかし、電線上の鳥にとって重要なのは《対空気》に対するバランスです。そして、そのバランスを見事にとっています。
ツルはなぜ一本脚で眠るか、という素朴な疑問が昔からあります。体温のロスを減らす効果がある、などさまざまな説があります。これに対して私にも仮説があります。《対重さ》でバランスをとるなら、二本脚の方が有利であることは間違いありません。しかし、《対空気》でのバランスでは、一本脚でも二本脚でも大差はありません。つまり、鳥は一本脚で眠ることで、「私は空気の中でバランスを取っている」と宣言しているかのように思えるのです。実際、風が吹く中で鳥が立っているためには、対空気のバランスが重要なのは明らかです。

■鳥は空気に満たされている

羽の軸が空洞になっている点はすでに触れましたが、鳥では胴体内、さらには翼の骨の中に気嚢という器官があり、空気が入っています。
野鳥事典のサイトよりお借りしました

ヒマラヤ山脈を越えることができるアネハヅルという鳥もいるくらいで、鳥の呼吸器は大変にうまくできていますし、そのために気嚢は重要な役割を果たしています。
人間の肺では、その微細部分である肺胞に到るまで《フイゴ》と《ガス交換》の二つの役割を果たしています。ところが、鳥ではこの二つの役割を分けているのです。つまり、《フイゴ》の役割は気嚢が果たし、《ガス交換》はそれ自体は動かない肺が行っています。そして、血液と空気が常に流れるなかでガス交換をしているために、上空の空気の薄いところでも効率よくガス交換できるのです。

■地水風火の火との関係も密である

鳥の体温は全般に高く、ノスリでは40.5度にまで達します。そうした体温維持と関連して,一日に体重の1/6の餌を摂るものもいます。体重60kgの人が10kgの食事をしている勘定です。
また、鳥では、呼吸のプロセスで熱が生じることが知られています。このように、風や火との関係は強いものの、水や地との結びつきは強くありません。身体に矢が刺さっても、さしたる出血もせず、生活を続けるカモなどがニュースで紹介されたこともあります。

鳥が水浴びをすることはよく知られていますが、鳥は濡れません。水と一体になることはないのです。

■その他の特徴


  • 背骨が相互に癒着している
  • 咀嚢や砂嚢を持つ

■人間の頭部との比較

人間の骨格で、骨が癒着していく傾向が最も強いのは、頭部です。新生児では大泉門が開いていますが、約二年をかけて閉じていきます。しかし、その閉じる傾向はその後も続き、骨同士が縫合面でつながり、さらには縫合面すら見えなくなります。その骨格融合傾向が鳥では胴部にも見られます。
人間では、食べた物をまず口腔内で咀嚼し、細かくします。しかし、鳥では、「鵜呑みにする」という表現があるくらいで、ほぼ丸呑みです。しかし、まったく咀嚼しないわけではなく、胴部の咀嚢や砂嚢で食べた物を細かくします。特に砂嚢では、砂まで飲み込んで、食物とすりあわせることで、食物を粉砕しています。つまり、人間では頭部で行われている咀嚼という働きが、鳥では胴部で行われていることになります。
人間でも、骨の中に空気の入った空洞があります。それが最も顕著なのが頭部の副鼻腔です。また、前に書いた通り、鳥では胴部に気嚢という空洞がありました。つまり、肺以外の空気部分を見ると、人間では頭部がそれに当たり、鳥では胴部がそれに当たります。

このように見ますと、鳥とは身体全体が頭部であり、鳥の頭は視覚と聴覚の出先機関として、空間に張り出している、と考えることができます。


鳥の姿はカメラマンの憧れでもあります。こんな写真を撮る人もいました。
ツバメの飛翔


この論考の基本は、Ernst=Michael Kranich先生のレクチャー並びに書籍です。そこに、いくつかの現象を加えてました。

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