北の紫のテーマは《死》でした。南の紫のテーマはその対極の《誕生》です。
《メイン》
これは上から見ていきましょう。一番上の左側には、四人が輪になっています。その右側には、両側に顔を持った存在がいて、その胸部には植物の葉のようなモチーフが描かれています。両側に顔を持った存在とはヤヌスで、物事の始まりの象徴でもあります。1月を表すJanuaryの語源もこれです。ヤヌスの下には大きな三葉のモチーフが描かれていますが、これと同様のモチーフは北側の《死》のメインにもありました。ただし、向きは逆です。ヤヌスは手を伸ばし、その手からは下に水滴のようなモチーフが大地に立つ右側の人物の頭部に向かっています。さらにもう一つの流れがその水滴に平行して上下を結んでいます。そしてその下端は大地の上に立つ二人のつなぐ手にあります。大地の上の左側の人物はドーム状のモチーフに囲まれていて、あたかもそこに集約されてきたかのように見えます。画面の左下には輝きを増すであろうと思われる太陽が描かれています。右上の四人は、これからの地上生における人間的関係、つまりカルマを暗示しているのでしょう。
地上の左側の人物が右側の人物に近づき、手を取り合うとそれは上の霊界とも関連しています。そしてヤヌスは上から右側の人物、おそらく女性でしょう、彼女に滴のようなものを落とします。こうして、人間の誕生に必要な条件が、霊界と地上界で整います。
《事前》
事前には、幾何学的フォルムが描かれ、やや膨らみを持った大地が描かれ、そこに子どもが周囲より明るく表現されています。子どもの左下には月が描かれ、上には上昇しようとしているように見える大きな円形が描かれていますが、円の上は左右からのモチーフで閉じています。しかし、その上に居る二人の天使は、しっかりとその様子をうかがっているようにも見えます。誕生前の人間
死後、アストラル体を浄化し、以前の地上生の成果を携えて霊界を通り過ぎた人間は、ある時点で次の地上生に向かい始めます。誕生への決意を持って、地上界に物質的外皮を探します。
ところが《事前》の絵では、大地には鉱物的諸力しかなく、物質的に固まる助けとなる月の力も作用していません。ここには《受肉への欲求》が表現されていると思われます。そして、霊界と物質界はまだ結びついてはいないものの、その様子は天使がしっかりと受け止めています。
《事後》
大地には曲線的、有機的(生命的)フォルムが描かれ、その輪郭も凹んでいて、何かを受け止めるフォルムになっています。大地のすぐ上には下を向いた暗い三日月が描かれ、《事前》では大地の中にあった幾何学的フォルムが空中に暗く描かれています。さらにその上には両側を天使に支えられるようにして一人の子どもの上半身が描かれ、その下には受け止めるような三つの三日月が描かれています。
子どもの上部には、曲線が描かれていますが、それらは上からメタモルフォーゼしています。基本的には中央がくぼんだM字形でそれが次第に4段階で大きくなっています。そして5つ目では左右に分かれ、6つ目は中央が上に膨らんだ形になり、子どもの上部を覆っています。
これらは明らかに、天使の助けによる道筋で、生命的に準備された物質素材に人間が受肉する様子でしょう。
霊界の旅における転換点で人間の自我は受肉を目指します。そしてまず、アストラル体を準備します。このアストラル体は、とりあえずは霊界での体験を自我と共にすべて身に着けています。つまり、次の地上生で自らが為そうとすることすべてや、その根拠、つまりカルマ的体験をすべて知っているのです。ところが、このアストラル体が《受肉》という課題をまっとうするために地上の方向を見始めますと、そうした霊界での体験をすべて忘れてしまうのです。この向きの転換とは、人類に課せられた宿命なのです。
ステンドグラスではここまでしか表現されていませんが、それに伴う帰結を補っておきましょう。
人間は、前世での行為の成果やそこから必然的に生じる次生での課題を、アストラル体の方向転換で忘れてしまいます。それでも、次の地上生での課題をまっとうする可能性は残されています。つまり、前世での《行為》やその《行為の帰結》は地上に残り続け、人間が誕生すると、その該当の人物に外から近づいてくるのです。ですので、自分に外から近づいてくる事柄の中に、自分にとっての課題、ミッションが書かれていると思ってよいのです。
添えられたシュタイナーの言葉
《事前》 | 《メイン》 | 《事後》 |
Es wird sein | Es entsteht | Es ist |
それは存在していく | それは生成する | それである |
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