2014年5月5日月曜日

ゲーテアヌムのステンドグラス南の青

北の青のテーマは《思考》でした。南の青のテーマはその対極の《意志》です。
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シュタイナー思想の中で言う《意志》は、単に「○○をやりたい」と思うことではなく、実際に行為にまで遂行されるに至ったものを指します。しかし、《意志》を捉えるのは至難です。『魂の謎』の中では意志の特性を次のように述べています。
例えて言えば、表象の方は着色面を見ている時の感じで体験しています。それに対し、意志の方は着色面上の暗い面を見ている時の感じで体験しています。着色面上からは色彩印象が得られる訳ですが、暗の部分ではまさに色彩知覚が欠如しているがために対極として《見える》のです。

メイン

メインの図は、黄道十二宮と人間身体との関係です。こうした対応は神秘学的伝統の中では古くから知られていて、『ベリー候のいとも華麗なる時祷書(じとうしょ)』にも美しい図があります。
800px-Anatomical_Man
 
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そして、黄道十二宮の星座と人間身体との対応関係は、両者とも同じですが、図の中での配列は異なります。ステンドグラスの配列では、12時方向に巨蟹宮が位置します。それらをまとめると、次のようになります。
双児宮:両肩
原ペルシャ文化期
巨蟹宮:胸郭
古インド文化期
獅子宮:心臓
金牛宮:咽頭部
エジプト・カルデア文化期
処女宮:代謝系
白羊宮:頭部
ギリシャ・ローマ文化期
天秤宮:腰(骨盤)
双魚宮:足
第5文化期
天蝎宮:生殖器
人馬宮:大腿部
磨羯宮:膝
宝瓶宮:脛
太陽の年周運動ではカニ座の次はシシ座なので、この配置では時計回りになります。また、春分点の移動はその逆で、約2160年毎にカニ座からフタゴ座へと移っていきます。この春分点の移動と、人類の意識状態が大きく変化する五つの《文化期》が対応します。

後アトランティスの5つの文化期

シュタイナーの霊視した5つの文化期は次のような順です。春分点がその星座に入ると、該当の文化期が始まります。
巨蟹宮:約9200年前から 古インド文化期
双児宮:約7100年前から 原ペルシャ文化期
金牛宮:約4900年前から エジプト・カルデア文化期
白羊宮:約2800年前(B.C.8c)から ギリシャ・ローマ文化期
双魚宮:約600年前(A.D.15c)から 第5文化期
ステンドグラスには、現在が双魚宮=第5文化期であることが示されています。こうした進化期を経て、霊界や物質界に対する人類の意識が変遷してきました。基本的には、しだいに霊界から離れ、物質界に目覚めていったのです。
霊界と物質界
エジプト彫刻にその一例を見ることができます。カフラー王座像(2500B.C.)です。
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正面から見た場合と、横から見た場合では、その印象はまったく違います。横から見ると、背後にホルス神がついていることがわかります。つまり、王の力は王自身ではなく、ホルス、つまり霊界に由来しているのです。(Gottfried Richter “Idee zur Kunstgeschichte” より)

人間の形姿

人間の肉体やその形姿は、人間が高い精神性を保つ上で、不可欠です。四つ這いの姿勢では十分な思考活動はできません。さらには、人間としての《自由》な行為もこうした人間的形姿に支えられている、と考えてよいでしょう。そして、その高度な形姿は《自我》が意識されないかたちで支えています。そして、その背景にはさらに宇宙的叡智の働きがあります。それが、黄道十二宮です。肉体形姿を作り出す《自我》の意識されない働きが部分的に衰えますと、肉体は人間的形姿を保てなくなります。その例が、肉体の変形を伴う病気です。

事前・事後

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両者とも描かれているモチーフはほぼ同じです。左上に居る天使、ワシ、下側の天使、銃を持った人物、道、さらに事後では飛んでいる弾が描かれています。
事前では、行為への可能性はありますが、獲物であるワシは天使に守られていて、打ち落とせる可能性はありません。ただ、下方の天使が上方の天使に何かの相談をしているようにも見えます。
事後では天使の位置が変ります。上方の天使は背後に退き、下方の天使は人物の側に近づき、状況を凝視しています。そして、ワシに向かう銃弾が宙を飛んでいます。行為が遂行されているのです。どちらとも、人物は、既定路線を暗示する道からはずれています。つまり、自由な行為と考えることができます。
このように、あらゆる行為が霊界との関連の中で遂行されているのです。自らの行為が、霊界にどのような波風を立てうるか、どのような作用を及ぼしうるかを考えてみることも有益かもしれません。

添えられたシュタイナーの言葉

《事前》
《メイン》
《事後》
Sich entschliessend
Die Aussenwelt im Entschluss
Er hat gewollt
決心する
外界が決心しつつある
彼は望みを遂げた

 

メインについての別案

シュタイナーはメインについて、別のスケッチも残しています。
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ウシ(エーテル体)、ライオン(アストラル体)、ワシ(自我)という文脈で意志を捉えたものと考えられます。これは、『一般人間学』第4講の内容と関連します。
肉体には《本能》が現れています。カギ爪はひっかく本能、牙は噛みつく本能、長い脚は走る本能の現れであり、基盤です。生命のリズムの中で、つまりエーテル体の活動に伴って、その《本能》が《衝動》へと高まっていきます。爪が伸びれば研ぎたくなってきますし、空腹になれば噛みつきたくなります。そして、アストラル体が関係する知覚が引き金となって、動物は行為します。ライオンはしっかりとガゼルを見て、爪で引き倒します。これが《欲望》です。
しかし、人間には《自我》があります。自我の働きで、そうした本能→衝動→欲望という流れに身を任せることはありません。摂食行動ですら、人間的な行為に引き上げられています。《自我》を持つ人間は、それをも越えて、《動機》から行為するのです。

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