2014年5月5日月曜日

ゲーテアヌムのステンドグラス西の赤

ゲーテアヌムの外観(西正面入り口)

Goetheanum_small

西側の赤のステンドグラス

正面に三つ並ぶ入り口から建物内部に入ると左右に階段があります。それを昇っていきますと、西側の大ホール入り口に近づくにつれ、赤い光に包まれます。ホール入り口に立ち、振り返ると、巨大な西側の赤ステンドグラスが間近に見えます。
000west-small
このステンドグラスはイニシエーション(秘儀参入)と名付けられている。
ステンドグラスは三枚組の9セット
ゲーテアヌムのステンドグラスはホール内に8セット、西入口に1セットの9セットありますが、すべてが三枚組です。左右に事前と事後を配し、中央がメイン事項です。
左の《事前》には5つのモチーフ
00w-01 00-西赤左右01a
このステンドグラスには5つのモチーフが描かれています。
1. 山
2. 坂を下る人間
3. 化け物
A) (右から)大きな眼、耳、鼻、口の化け物
B) 背伸びし、目尻が垂れている化け物
C) 小さな羽の鳥のような化け物
化け物a
00-西赤左右01aa
一番右の化け物は、禿げた頭に短い直線が放射状に5本引かれています。そして、その頭部には大きな目、尖って大きな耳、大きな鼻、そして大きな口が描かれています。鼻など、シュタイナーはより大きなものに修正しています。そうした感覚器官の割には、脳が入っている頭の部分は小さく描かれています。さらに、胴体は小さく、手は未完成で手先はなく、また足は見えません。
この化け物は、人間の魂内に存在しています。見たり聞いたり嗅いだり味わったりすることに貪欲で、手がなく、自分からの行為に対しては消極的な内的姿勢です。萎えた意志、感覚的享楽に惹きつけられた魂と言ってもよいでしょう。
化け物b
00-西赤左右01ab
真ん中の化け物は背伸びをするような4本の短い足の上に不安定な姿で上に伸びています。上の方のマッスは大きく、ちょっと胸を張ったような感じになっています。唇が大きく前方に伸びてはいるものの、下に垂れ下がっています。眼もことさらに上に向かおうとしているものの、目尻は下に下がっています。
この化け物のキーワードは「背伸び」でしょう。そして、上の方だけが偉そうにしていて、口先は発達していますが、先が曲がっています。口からでまかせの嘘八百を並べ立てるような口ではないでしょうか。目は愛想よく上に向かっていますが、結局は下に引きつけられています。そして、よろよろと不安定なくせに胸だけは張って威張っています。虚栄を目に見える姿にしたら、このようにならないでしょうか。
化け物c
00-西赤左右01ac
一番左の化け物は、首の長い鳥のような姿です。しかし、翼には羽がなく、胴も重たく、飛べる見込みは全くありません。
鳥は思考のシンボルでもあります。状況を俯瞰的に見渡し、遠くまでの道筋を見出すのです。しかし、この鳥の化け物は非力で飛べません。
意志、感情、思考が陥る危険性
意志には目先の欲望だけに向かってしまう危険があり、感情には、周りの世界とのつながりを失い、自分自身に耽溺していく危険があり、さらに思考には、物に囚われ、上方にはばたけなくなってしまう危険が伴うのです。
人間はこうした危険にさらされつつ、道を下るしかない状態です。
右の《事後》では、人は高みに
00w-0300-西赤左右01b
イニシエーションの《事後》に当たる右側では、化け物を克服しています。
人間は高みに立ち、(霊的な)太陽の光を受けています。魂の中の化け物を完全に解消することはできないにしろ、その悪しき姿が前面に現れることはありません。高みにいる人間と魂内の化け物との間には、3組の天使が化け物の支配から人間を守っています。
中央のイニシエーション
この特別な人間の顔は、即座に理解はできないにしろ、何か特別な印象を与えてくれます。もちろん、ゲーテアヌムの階段を昇って、赤い光に包まれてこの顔と向かい合うのは特別な体験と言えるでしょう。
00w-02
そこに描かれているのは、顔の他に13のモチーフです。
1. 土星
2. 土星の下にある隙間
3. 右側の身を乗り出した天使
4. 左側のややのけぞった天使
5. 右側の同心円状の線
6. 左側の放射状の線
7. 額の渦状のモチーフ
8. 眉間の縦の筋
9. 右側のウシ
10. 左側のライオン
11. 喉の部分の8対の渦状モチーフ
12. 胸部分の天使
13. 胸部分右側の龍
土星とその下にある隙間
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土星のモチーフはシュタイナー自身のスケッチにすでに現われています。そしてそれは、図のように、土星、太陽、月という系列で描かれています。つまり、『神秘学概論』で述べられている土星紀、太陽紀、月紀、地球紀という宇宙進化を象徴していると考えられます。
両側の天使の肩の辺りから、舌のようなモチーフ(天使の羽ではない)がせり出していて、土星の下に隙間をつくっています。この隙間は、「土星段階までの霊視の道は閉ざされていない」ということの象徴のように思われます。
左右の天使から左右のウシ、ライオンのモチーフ
それぞれの側に描かれたモチーフを挙げてみましょう。
右側:身を乗り出した天使、同心円状のモチーフ、ウシ
左側:のけぞった天使、放射状のモチーフ、ライオン
まず、身を乗り出しているか、のけぞっているかの違いを検討します。この部分はスケッチではさらに強調されています。
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00-西赤中央02b
右側(ウシ側)からの流れは、そこに完全に入り込む動きを示しています。それに対し、左側(ライオン側)からの流れは、最後のところで溜まって、雫のような形になっています。スケッチにおけるこの流れの質の違いが、ステンドグラスでは天使の姿勢で表現されていると思われます。
天使の下には、右側に同心円状の、左側に放射状のモチーフが見られます。同心円は《成長》を表現しているとは考えられないでしょうか。また、放射線とは、手探りするときの手の動き、何かを探すときの視線の動き等々、何かを《知覚》しようとするときの動きではないでしょうか?これらはさらに、《成長=時間》、《知覚=空間》という関連も暗示しています。
ウシを生命力のシンボルと考えるのは自然でしょうし、ライオンが情動的なもののシンボルと考えても、不都合はありません。
このように見ますと、顔の右側からはエーテル的なものが人間に流れ込んでいることがわかります。エーテル的なものは、誕生から死まで、人間に完全に入り込みます。そして、右側からはアストラル的なものが流れ込んでいます。これは、覚醒時には人間に入り込みますが、睡眠時には人間から離れていきますので、完全に流れ込んでいるとは言えません。
額の渦状のモチーフは、その意味でエーテル体とアストラル体の結びつきを表現しているとも考えられます。また、額にある二葉のチャクラを表現している、という説もあり、そのどちらも間違いではないと思います。
眉間の縦の筋
これは元になったスケッチには登場しません。最後に付け加えられたものです。人間の自我を表現した可能性もあります。『神智学の門前にて』という講演で、シュタイナーが「自我は眉間で、青い光のように見える」と語っているからです。
喉の部分の8対の渦状モチーフ
これは咽頭にある16葉のチャクラであるという説が有力です。現代人にとっては、この咽頭のチャクラが重要な意味を持つ、ともシュタイナーは言っています。
胸部分の天使&龍
00-西赤中央03a
ステンドグラスだけでは見にくいので、スケッチを見ましょう。これは龍と戦う大天使ミカエルだと言われています。つまり、霊界における現代の戦いがここに集約されています。
まとめ
この《イニシエーション》のステンドグラスは、ミクロコスモスである人間存在の本質、その進化の歴史をも含めた本質が表現されているのではないでしょうか。そして、それを認識するとき、人間は下降の道から離れ、高見からの力を受け取ることができるようになるのだと思います。

添えられたシュタイナーの言葉

《事前》
《メイン》
《事後》
Es offenbart
Ich schaue
Es hat geoffenbart
それは開示する 私は観る それは開示された

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