■ナデシコと人間の心
シュタイナーは「植物は大地の魂」と言っています。ですので、人間の心の様子を植物が表現している、という視点で植物を見てみましょう。
■コケット(Kokett)
色気を振りまく若い女の子の様子が典型的なコケットです。それを言葉で表現すると、どうなるでしょうか。
まず、一番の関心は、他者の目を自分に惹きつけることです。しかし、積極的に相手に近づいて行きはしません。当然ながら、満面の笑みで相手を歓待してしまったら、コケットではありません。外に向かって共感的にアピールするものの、強い反感的な力で自分の中に留まる感じです。
■ナデシコの形態
▲花の形と色
ナデシコの花でまず眼につくのは、派手な花びらです。先に切れ込みがあり、花びらはその縁で終わるではなく、広がりを暗示します。しかし、自分が周囲に向かって広がっていく、というのではありません。色はちょっと気取った感じの濃いピンク色です。この色の動きはどう感じられるでしょうか。深紅や黄色でしたら、また違った印象でしょう。黄色ですと、《素直な笑顔》という感じではないでしょうか。
▲ガク
ガクは花びらからは想像できないくらい細く長い形をしています。 花びらは外にアピールする色や形ですが、細く長いガクに、ナデシコが多くを「隠している」を感じます。
花を分解しますと、花びらはガクの底から発していて、非常に細長く上に伸び、ガクから出たところで90度近く曲がった、急激に広がっていきます。
▲葉
葉は細い単純な形で、茎の同じ高さから両側に出る対生です(図の矢印)。多くの植物では、葉が1枚1枚茎を上りながら出ます。それでも、子葉は対生です。 また、子葉は単純な形でその植物の個性があまり現れません。子葉の形を図鑑で見比べても植物の種類は見分けにくいです。
ナデシコの葉の様子、つまり対生=子葉段階というのは、これからの発達を見せるべき初期段階なのです。 ナデシコは、前面には出ず、控えめに留まっています。
▲茎
カーネーションの切り花を扱ったことがある人なら誰でも気づくことがあります。茎が非常に硬くしっかりしているのです。芯、あるいは中心がしかりしていると言えるでしょう。
▲全体の様子
ナデシコの仲間では、中心である茎が非常にしっかりし、葉も、ガクもその茎に密着し、外に向かうというよりは、中心に向かう傾向が強く見られます。ところが、花びらで様相が一変します。外に向かって、大きくアピールするのです。しかし、それでも中心との結びつきはしっかり確保され、自らが周囲に流れ出ていくことはありません。
このように、《魂的しぐさ》という視点で見ますと、ナデシコはコケットと言えるのです。ドイツのStern Viewという雑誌にkokettと題する画像がありました。まさにドイツ的Kokettな雰囲気の女性の写真です。クリックしてみてください。
■大和撫子
ナデシコには、中心に向かう傾向と外に向かってアピールする傾向がありました。この中心向きのベクトルが利己主義で、他者の目を惹きつけることで自己の価値を確認したい、というものであれば、kokettになります。
それに対し、中心に向かう傾向が「つつましさ」の現れで、外へのアピールも意図的なものではなく、自ずと現れる魅力である場合、《大和撫子》という、絶滅危惧種に対応するのではないでしょうか。最後の大和撫子は、田中真紀子氏でしょうか。
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