製作例
■4年生はクロス・ステッチ
多くのシュタイナー学校では4年生の手の仕事の時間にクロスステッチを取り上げます.
学校によっては(週2時間程度で)1年をかけてやや大きなものを作らせる場合もあります.
大きなものでは目の数が多く,仕事に根気を必要とします.仮に50目×50目ですと,2500目になります.
また,大きな作品では,目の位置などで間違いを犯す可能性もずっと高くなります.
ですから,手始めに短時間で仕上げる場合には,20目×20目=400目くらいが妥当なところでしょう.
ちなみに,ここでのやり方は「よこはまシュタイナー教育の会・子どもクラス」の神田昌実さん(現在、横浜シュタイナー学園教師)から学んだ方法を、やや簡便にしてまとめたものです.
■材料
参考までに商品名を入れておきますが,これに順ずるものであれば,メーカーは問いません.
・ クロスステッチ用の布(一目4mmのもの),120mm×120mm(30目×30目)
・ 刺繍糸(15から20色程度)ヨリがやや強くかかったもの.
(DMC社製25m,ヨリの強い刺繍糸はこのメーカーの他に,オリンパス,コスモなどがあります).
・ 4mm方眼のデザイン用の紙(ダウンロード) (下図のような感じで、原寸でデザインできます。)
・ クロスステッチ用の針
■デザイン
デザインの基本は2つです.用途に応じたデザインと色彩であること,またコースターでは 四方対称のデザインであることです.
日常使うものをデザインする場合には,その用途に応じたデザインをするようにします.
たとえば,ティー・ウォーマーでしたら,
(1)温かさを感じさせる
(2)下が空いていることがわかる
といった要素を盛り込みます.
人間にとっての自由とは,勝って気ままな振る舞いではありません.自分が為すべき必然を洞察することが自由なのです.その哲学がこんなところにも盛り込まれています.
実際に刺繍する面は80mm×80mmですので,4mm方眼のデザイン用の紙に大雑把にデザインします.
デザインのための下書き.大きさは出来上がりの実寸です.
■目数を数える
各色の目数を数える.(1/4を数えて4倍してもよい).
糸は1mで40目程度刺繍できるので,それに応じて糸を確保する.
■刺繍
刺繍をしていくにあたって,玉止めはしません.余った糸を裏で糸の間に通します.
間違いなく刺繍を進めていくためには,刺繍すべき20×20の縁をしつけ糸で印をつけておく方がよいでしょう.
さらには,中心点にシールなどを貼るのもよいかもしれません.
刺繍にあたって注意すべきことは,右上がりの糸と左上がりの糸の交差上下関係を全体で統一する点です.
右利きの場合は,右上がりが下,左上がりが上になります.
右利きの場合の刺繍順序は以下の通りです.
· 横に刺繍していく(左へ移動)
· 上に刺繍していく(上へ移動)
· 斜めに刺繍していく(右上へ移動)
· 斜めに刺繍していく(左上へ移動)
· 斜めに刺繍していく(右下に移動)
· 斜めに刺繍していく(右上に移動)
· さらに,面で埋めていく場合(その1)(その2),があります.
これらの中では,横に埋めていく刺繍の仕方が最も簡単なので,まずはそれで始めるとよいかもしれません.
それぞれの場合についての刺繍の順序を以下に示します.
青丸は一つのクロスの出発点を示します.
あとは,番号順に糸を通します.
赤が布の表,緑が布の裏側です.
■土曜クラスでの指導の経験から
人にはそれぞれ異なった才能があります。こうした手の仕事を指導しますと、幾つかのグループに分かれることが分かります。
- 能力もあり、成果が上がるので楽しんでどんどんやっていく子ども
- 習得にやや時間がかかるものの、やがては楽しみにやっていく子
- 精一杯の努力でどうにか1枚仕上げられる子
1~2割くらいの子どもが3.のグループに属します。そうした子どもには、「一生で1枚作ればいいし、それは君の大きな力になる」と励まします。多少の刺繍間違いがあっても、密かに修復するか、目をつぶるかのどちらかにしています。とにかく最低限《仕上げること》を目標にし、《投げ出す》ことだけは避けるようにします。
1.の子どもは、デザインなど、より高度な部分で簡単なアドヴァイスを与えれば、勝手に先に進んでいきます。
■出来映えを気にし始める年齢
4年生くらいになりますと、自分がやっていることの出来映えを気にし始める子どもが増えてきます。そんな時に、布の縫い目が位置をきちんと助けてくれ、間違いなく作業を進めていけば、出来映えのよい作品ができるクロスステッチは、子どもに大きな喜びをもたらすようです。
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