2014年6月3日火曜日

水が陸地の形をつくる場合

■現代自然科学の思考法


現代自然科学の思考法は、物質主義に非常に汚染されています。あらゆる事柄の基盤は《物》である、という迷信に「科学的な物の考え方」という美名の元に洗脳されています。健康を考える際にも、ビタミン、DHA、コラーゲン等々、「身体にいいと言われる物質」を摂取することで、健康を保てると考えます。そして、実際にこのサプリ摂取という方法はある程度機能しますから、その信奉者は増えるばかりです。

あるいは、すべての生命現象はDNAが原因であると考えられています。そして、もちろんこれは間違いではありません。ただし、どの程度まで正しいのかを吟味している人は、多くはありません。ここでは、このDNA原因説の捉え方の一つの可能性を提示するにとどめます。

生命現象がDNAを基礎に成り立っているのは正しい。しかしそれは、小説が特定の文字配列で成り立っている、というのと同等の正しさである。

■四大元素論はアントロポゾフィーの必須科目


さて、「物質を基盤に現象を考える」視点で物事を捉えますと、生体なども、まず物質が存在し、その物質の諸性質の結果として、器官が生じる、と考えます。ところが、シュタイナーの言葉を理解するためには、こうした物質主義的な発想から離れなくてはなりません。そうではなく、四大元素(地水風火)を思考の基準にする必要があります。この視点から物事を実際に考える例は、このblogでさらに取り上げていきます。いずれにしても、まず四大元素的思考に慣れる必要があります。

■《水》が《地》の形を決める


四大元素的に考えますと、《形》という性質は、《地》の要素と密接にかかわっています。液体の形や気体の形というのは想像しにくいでしょう。そして、《流れ》という性質は《水》とかかわります。この《地》と《水》の関係は、《地》の形が《水》のあり方を決めていると考えることがほとんどです。上流のせせらぎの流れは、地形が決めていますから、すべてがそのように決まっていると考えがちです。

しかし、現象をよく見ていくと、流れが形を作り出す例もあります。図は、千葉県の九十九里浜の海岸線と函館の海岸線の比較です。両端に硬い地形がありますと、そこに特定の流れが生じ、その流れの結果として弧を描く地形が生まれます。

クリップボード01

クリップボード03
あるいは、川の三角州(デルタ)も同様です。川が開けた海に一気に広がると、その間に流れがゆっくりな部分ができ、砂州が生まれます。
地球科学を学びますと、硬い山の形ですら、造山運動という《流れ》の結果であることがわかります。あるいは、駅前の放置自転車の配列も、(人の)流れの結果とも言えます。したがって、人の流れを考慮すれば、駅前放置自転車は減らせるはずです。

このように、《地》が《水》の様子を決める場合も多くありますが、それでも《水》が《地》の様子を決めている場合もあることを忘れてはいけません。地水風火で言えば、《地》が一番濃密で、《火》は一番希薄です。それゆえ、濃密なものが希薄なものの様子を決める、と考えられることが多いのですが、希薄なものが濃密なものの様子を決める場合もありますし、それは重要な意味を持ちます。

■動物は《熱》から始まる


『農業講座』第7講の最後でシュタイナーは、地水火風の視点から動物と植物のあり方を説明しています。

動物と植物

第七講図02a

動物は《熱》と《風》の中では、個として存在しているが、《水》と《地》としては、植物から素材を受取り、それを体内で変化させている

植物は《水》と《地》の中で固有の存在であるが、《熱》と《風》は地中でそれを体験するだけで、内に取り込むことはしない

と述べています。(ちなみに、イザラ書房刊の翻訳では《地》も「大地」と訳しているので、読解には注意が必要です。)
この文章を理解するために、動物については、まず、《熱》素材からなる環境の中に《熱》素材からなる哺乳動物が居ると考えてみましょう。サーモグラフで捉えた動物の映像が、その物質的イメージかもしれません。熱世界の中に熱動物が居ます。冷たい環境に居るホッキョクグマなどは、熱存在として際立っているでしょう。この熱動物の形態は動物の形態とほぼ同じでしょう。

この現象に対し、物質主義は次のように考えるでしょう。つまり、動物を作っている肉体があって、そこでの代謝の結果として熱が生じているので、目に見える動物身体の姿と同じような熱身体が生じる、と。しかし、シュタイナーの霊学では原因と結果を逆に考えます。まず、熱からなる動物の身体があり、そこに物質素材が満たされて目に見える動物の姿になる、と考えます。そして、動物はこの熱形態は自ら作り出すことができるのに対し、《地》と《水》、つまり固体的なものや液体的なものは自分の力だけでは自分化できず、植物からそれを得ている、というのです。ライオンがシマウマを食べるにしろ、シマウマの栄養源は草ですから、すべての動物の栄養源は植物と言えます。《地》的素材である炭水化物を、実際、すべての動物は植物だけから得ています。

このように、《熱》からなる身体を考え、そこに素材が満たされていく、というイメージは非常に重要です。私たちの病気でも、身体の《熱体》に問題があると、言い換えると部分的に《冷え》があると、それが病気の原因になります。たとえば、動脈硬化は、シュタイナー医学では、そうした局所的な冷えと関係していると考えます。

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