2014年6月5日木曜日

《風》元素の重要な一性質

■《風》元素と水晶


四大元素を軸に現象を考察するためには、地水風火それぞれの質を知っていなくてはなりません。たとえば《地》では重さや形といった概念と関係しますし、《水》では、流れやつながりと関連します。もちろん、《火》や《風》のさまざな概念と関係しますが、その中の一つを「水晶の結晶」との関係で取り上げます。


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■《風》(空気)は透明であり、存在感がない


《風》が最も《風》らしいのは、遠くの山がクリアに見えるときです。視界が悪くなるときには《水》の要素が強くなっていることは経験からも分かります。つまり、《風》は媒体として他者の様子を伝える役割を担っていますし、それは視覚だけでなく、聴覚や嗅覚でも同様なことが言えます。《風》は、自己主張せず、他者のための場を用意する存在なのです。私たちの中にも、そうした風的要素がありますし、また必要でもあります。しかし、逆に過剰である場合には、問題になります。

■70℃で沸騰する水


減圧沸騰(再沸騰)と言っても、ご存じない人も多いかもしれません。私の場合は、中学校の理科の尾崎先生がデモンストレーションしてくれたのを覚えていますが、すべての中学校で行なわれている訳ではないでしょう。
再沸騰の現象

1.フラスコ内で水を沸騰させる
2.沸騰した状態で、ゴム栓で密閉し、火を止める
3.やがて、沸騰はやむ
4.さらに温度を下げていくと70℃から60℃、再び、沸騰が始まる。

理由は、フラスコ内の圧力が下がって、水の沸点も下がるからです。富士山の山頂では、お湯が十分に高温にならずに沸騰してしまい、お米が上手に炊けない、といったことが知られています。
減圧沸騰についての動画もあります。実験で確認できない場合は、こうしたものも有効でしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=9v6knHc7FHw

20年くらい前に、この実験を学習障害のある中学生とやったことがあります。その時に、この動画でも見過ごされている、ある重要な現象に気づいた子が居ました。

鍋でお湯を沸かしますと、沸騰を始まりから見ることができます。鍋の底に泡が出来はじめますが、初めはそうした泡はすぐに消えてしまいます。底で大きくなるものの、上昇するにしたがって小さくなっていくのです。ところが、再沸騰では、泡の大きさ変化が逆向きで、底の方で出来た小さな泡が、上昇するにしたがって、大きくなっていきます。これは動画でも確認できます。実は、この現象が水晶の結晶化と密接な関係があるのです。

■水晶はどのようにして結晶化するのでしょうか?


特別なやや硬い丸い石を割ると、中が空洞になっていて、そこに水晶の結晶ができています。

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マグマがゆっくりと固まる際に、結晶化しやすい成分が密になることがあり、その部分をペグマタイトと呼んでいます。

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ペグマタイトの画像(岐阜大学のサイトより)

そのペグマタイトが地表に向かって上昇してきますと、さらに温度が下がり、また圧力も下がります。これに伴って、ペグマタイトに含まれる水も、しだいに変化していきます。水は100℃で沸騰しますが、これは1気圧の場合で、圧力が下がれば沸点も下がることは述べました。逆に、圧力が高くなりますと、沸点も上昇し、より100℃以上でも液体です。これは圧力釜の原理です。この圧力釜よりさらに圧力を高めていくと、300℃以上でも液体状態を保てます。(ちなみに、水の場合、 温度647 K (374℃)、圧力 22.064 MPa(218 気圧)で、臨界状態に達し、液体とも気体とも言えない状態になります。)そうした、高温高圧の水に水晶の成分であるケイ酸が含まれていると考えてください。

■結晶は泡の中に

このケイ酸を溶解した高温高圧の水を含むペグマタイトが地中深くから、地表に向かって上昇しますと、温度も圧力も下がります。この圧力がある水準を下回ると、中に含まれている水が沸騰をはじめ、ペグマタイトの中に水蒸気の泡ができます。その泡の中では、水分が益々少なくなり、溶解していたケイ酸が結晶として析出をはじめます。このように、岩の中にできた空洞に結晶ができるのです。もちろん、この空洞の大きさはまちまちで、ブラジルなどでは、結晶がちりばめられた小部屋ほどの大きさのものもあったそうです。

泡が大きくなるか、小さくなるかは、シャボン玉吹きの経験から考えてみてください。どういうときに、大きな物ができ、どういうときに小さな物が多数できるでしょうか。
結晶という存在が実現するためには、このように《泡》が必要でした。つまり《風》の元素が「他者のための場」を作ってくれたのです。

結晶の採集では、このペグマタイトの識別が重要です。山道を歩いていて、ペグマタイトを見つけたら、そこを登っていけばペグマタイトの露頭が見つかる可能性があり、さらにそこには各種の結晶が見つかる可能性があります。山へ行ったら、花崗岩の結晶の大きさにも注目してみませんか。

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